キツネ君、知っていますか?
カミツレには不眠症を改善する効果があるのですよ。
昔、よくお世話になりました。
眠れない夜はカミツレのお茶を飲みながら、大好きな本を読んでいたものです。
積み上げた本の山は崩れていくのに、内容はちっとも頭に入らない。
揺れる薄明かりと時計の針の音が、僕の心を乱すのです。
結局僕は、でたらめな、無意味な、途切れ途切れの文章しか読み取れませんでした。
そんな夜を、僕は幾つ越えたのだろう。
蒐集した本は、すべて燃やしてしまいました。
僕には必要の無い物だと解りましたから。
代わりに、切れ端ばかり集めてみたくなりました。
屑星が星座を象って、眠れない誰かの目を楽しませる様に。
僕の集めた断片も、誰かの目を楽しませるかもしれない。
ねえ、そう思いませんかキツネ君……キツネ君?
まったくもう……人が真面目な話をしているというのに。
君にカミツレ茶は必要ないみたいですね。
そんなところで寝ていると風邪を引きますよ、キツネ君。