愛のある食卓/蝿

【 愛のある食卓 】

「三日目はシチュー」

「……うん」

「赤ワインをたっぷり使って、半日煮込んだ。隠し味はチョコレート」

「あのさ」

「何?」

「僕もよく考えたんだけど、これだけは無くなったら絶対に不便だからさ、だから…」

「明日で最後。一応、ハンバーグにする予定」

「お願い、キツネ…」

「早く食えよ。冷めるから」

「…………、うん…」

【 蝿 】

四肢をもがれた僕を、彼は人形のように扱った。

それは必ずしも悪い意味ばかりでなく、その手の人形に愛好者がするように、

甲斐甲斐しく世話を焼き、僕が暇を持て余さないよう趣向を凝らし、夜毎愛した。

今日もまた疲れ果てて眠る彼の隣で、僕は天井を見上げている。

頭の上を蝿が飛んでいた。

どうやって追い払おうかと思案しながら、少しだけ泣いた。

2008/10/4