【 愛のある食卓 】
「三日目はシチュー」
「……うん」
「赤ワインをたっぷり使って、半日煮込んだ。隠し味はチョコレート」
「あのさ」
「何?」
「僕もよく考えたんだけど、これだけは無くなったら絶対に不便だからさ、だから…」
「明日で最後。一応、ハンバーグにする予定」
「お願い、キツネ…」
「早く食えよ。冷めるから」
「…………、うん…」
【 蝿 】
四肢をもがれた僕を、彼は人形のように扱った。
それは必ずしも悪い意味ばかりでなく、その手の人形に愛好者がするように、
甲斐甲斐しく世話を焼き、僕が暇を持て余さないよう趣向を凝らし、夜毎愛した。
今日もまた疲れ果てて眠る彼の隣で、僕は天井を見上げている。
頭の上を蝿が飛んでいた。
どうやって追い払おうかと思案しながら、少しだけ泣いた。