【つめたいほし】 /midnight
透明な黒に塗り込められた空を、一筋の光が滑り落ちた。
―――今、君の願い事は何?
僕はもう、流れ星には祈らないよ。
消えないでと願った君が、もう隣にいないから。
――――ああいかないでくれよ 消えないでくれ』
*
【ねーママ】 /狐面の男
「本当に神様がいるなら、」
路傍の少女が、ささやかな問いかけを、誰に向けるでもなく呟く。
「あたしのことを助けに来てくれるかな」
人気の無い路地、群青の闇が微風のような声でそれに答える。
「『神様』は水面に落ちた白鳥の羽根のようなものさ。
鳥が捨てていった安っぽい白い羽根にすら、水底の汚泥でもがく僕らは触れることも叶わない」
「じゃあ、あなたが助けて。あたしを助けて。そこにいるなら」
闇は答えない。
少女の唇に止まっていた夜蛾が、音も無く地に落ちた。
――――金で買うガキの股見過ごす俺が歌ってるんだ』
*
【渦】 /master
何に怯えてるの。
ひび割れた窓ガラスに映った僕の影が笑う。
空っぽの自分が怖いのかい?
――――満たないから手を伸ばしたって無駄さ 届かないよ』