「成程、それが君の願いだね」
悪魔さんの言葉に、わたしは頷きました。
といっても、私の形では頷くというより、震えたと言った方が正しかったかもしれません。
「お安い御用だ」
そう言うと悪魔さんは、背中の大きくて真っ黒な羽を広げ、その両手から立ち上る炎をじっと見つめているうちに、気がつくとわたしは、人間になっていたのです。
・
・
・
おや、お久しぶりです。
あなたに会うのは1年ぶりでしょうか。
―――はじめまして?
いやいや、そんなはずはありません。
私、記憶力には自信あるんです。
その証拠に、あなたと交わした会話もしっかり覚えているんですよ?
『世界一悲しいお好み焼き』
思い出してくれましたか?
あれは失敗でしたねぇ……塩味が効き過ぎた。
なので次は世界一悲しいスパゲッティー……
と、思ったのですが。
主食ばかり続くのも、と思いましてね?
今度はデザートに挑戦したんですよ。
最近流行ってるじゃないですか、
『塩キャラメル』とか『塩アイス』とか。
だから、私も。
『世界一悲しいプリンア・ラ・モード』
これはいいアイデアでしょう!
肝心の味ですが……
思ったとおり、塩味がカスタードの甘さを引き立てて、今回こそ大成功!
……と、言いたいところですが。
こんどはちょっと、カラメルソースの苦味が効き過ぎました……
夜に考えたアイデアは、昼間もう一度練り直すべきです。
あなたも気をつけてくださいね?
深夜のテンションで、大事なメールなど書かないように。
さて、余談はこのくらいにして……
もう一度、改めて訊きましょう。
あなたの願い事は、なんですか?