圭太の作ったてるてる坊主の努力も空しく、今日は雨。 今日も雨。
「そろそろ神様も雨降らしに飽きてくれていいんじゃねーのかぁー?」
住人達の洗濯物を部屋中に張り巡らした紐に干しながら、久保はため息交じりにつぶやいた。
窓の結露を指でなぞり、おそらく猫と思われる四つ足の物体を描いていた昴が振り返る。
「あめって、かみさまがふらすの?」
「さあ、俺は神様んちのことはよく知らないけど、空の上から降ってるんだから、たぶん神様が降らせてるんじゃない?」
「かみさまのともだちかもしんないよ?」
「ん、あー、そうかもな」
洗濯機に残った洗濯物を誰の部屋に干そうか思案しながら、ついおざなりな返事を返す。
昴は黙って、再び窓の方を向き、猫の隣に別な絵を描き始めた。
久保ははっとして、洗濯物を干す手を止めて、黙々と窓に絵を描く昴を見つめた。推定猫の体から水滴が流れおち、猫は見る間に血まみれ、無残な姿へ変わる。
「……なぁ、昴」
「んー?」
「雨が止んだら、どっか連れてってやるよ。どこ行きたい?」
昴は振り返り、太陽のように笑った。
「あめのふらないところを さがしにいこうよ!」