【 rainy day 】
「富樫くん手伝ってほしいのす!天井に手が届かないのす」
「しょうがねぇなぁ……」
「富樫くんは背が高いのすなー、大富樫のす」
「何だよ大富樫って」
「で、こっちが小富樫のす」
「なっ、おまっ、なに人の寝顔勝手に撮ってんだよ!」
「これも天井に貼るだろわいよ!」
「アロンアルファはやめて!」
今日は雨。
小さな青空に明日への希望を託して。
【 おおくも 】
「富樫くん、雲がでっかいのす!大雲のす!」
「あれはなあ、入道雲って言うんだよ」
「こんな時、空を飛べたらいいのになーって思うだろわいよー。富樫くん!ラピュタは本当にあったのす!」
「おおー言うと思った!」
自転車がしがし漕いで、このまま空だって飛べる気がする。
【 夏の夕暮れ 】
「富樫くん、今すぐ出掛けるのす!」
「もう夕方だぞ」
「6時から河原で大バーベキュー大会があるのす!デカいのすよー!」
「……お前、牛一頭丸ごと焼くの想像してない?」
「豚ものす!」
【 また、雨 】
「雨、止まないのす」
「止まないな」
「きっと泣けない誰かの代わりに泣いているのす」
【 AM10:24 】
うつろな空が、偽物の瞳に反映する。
胸が空くほどチープな青色。午前10時の晴れた空。
「空飛びたいか、ノス」
「んー…今はそうでもないのす」
ぎこちなく腕を伸ばし、両手を空にかざす。
「届かないから、きっと綺麗に見えるのす」
草の匂いのする風が、髪をさわさわと揺らした。