僕は犬を飼っている。

金の毛並みの美しい犬。僕によく懐いていて、僕が暇なときを見計らい、おずおずと手を舐めて撫でてとねだる。

長い毛を梳く様にしてやるのが一番好きで、心地よさそうに目を細めるその姿が、僕は愛おしくてたまらない。友人には、甘やかしすぎだとよく言われるけれど。

僕の手元に来てしばらくは、どうしようもないわがまま犬だった。

安いドッグフードは食べようとしないし、あちこち跳ね回っては、大きな身体で家具や家の壁に穴を開ける。

時間を構わず大きな声で吠えるものだから、僕はしばらく寝不足に悩まされる羽目になった。

だけど、長い時間をかけて、僕は根気良くしつけを続けた。

何度も噛み付かれ、僕の体には消えない傷がいくつか残ったが、おかげで今ではすっかりおとなしい、どこに出してもおかしくない立派な犬になった。

知性ある風貌、しなやかで頑丈な四肢、そして僕の愛する美しい毛並み。

もちろん見た目だけじゃない。

一度言ったことは決して忘れないし、無駄吠えもしない。

待てと命じれば僕の許しが出るまで身動きひとつしないその忠誠心。いつも僕に寄り添いたがる可愛いところもあって。

どんなに言葉を尽くしても、僕の犬の美しさは喩えようがない。

当たり前だ、だって僕が作り上げた、世界でたった一匹の犬なんだから。

「さあ、お散歩に行こうか、キツネ」

ただひとつ難をあげるとしたら、未だに二本足で立とうとする癖が直らないことだろうか。

2008/7/1
conte「僕の犬」元ネタSS