科学の夜明けのひとつ前

透き通った和毛に白い霜が降りて、固く張り詰めて青ざめた顔はまるで僕に似ていない。

ガラスカバーの向こうから温もりは伝わらない。

黒に群青を塗り重ねた夜の中で今日もひとりレトルトカレーを食べる。

空はまだ暗い。

モニターにランダムな線を描く機械に寄りかかり今日の出来事を報告。

声は次第に小さく擦れ、零れた涙声が膝の上にちいさく丸い染みを作った。

泣いてごめんなさい。強くなくてごめんなさい。大空を飛び回る少年型ロボットのようになれない僕を叱ってよ、暖かく力強い声で。

朝はまだ来ない。

3倍速で移り変わる時代を伏し目でやり過ごして、少年は夜明けを待つ。

明るい未来はすぐそこで手を振っている。真新しいボールとグローブを携えて笑ってる。きっと。

『よし、やるか!キャッチボール!』

2009/2/18